HOME > 季刊誌&健康チェック > 学研都市病院 副院長内科部長・消化器科部長 竹村 俊樹 医師

カプセル内視鏡検査で“暗黒の臓器”小腸の疾患をスクリーニングx

学研都市病院では、口から飲み込むだけで小腸の検査ができる「カプセル内視鏡検査」を、今年8月スタートしました。 カプセル内視鏡はカメラや光源、電池などを内蔵した、ビタミン剤ほどのカプセルで、従来の「つらい」イメージの内視鏡検査とは異なり、検査中に仕事や家事もOK。消化器内科担当の竹村俊樹副院長がお話します。

カプセル内視鏡検査の 仕組みと特徴は?

カプセル内視鏡

〈写真1〉
カプセル内視鏡は、ビタミン剤より少し大きい程度で、簡単に飲み込める。使用後は便と一緒に排泄されるのを待って回収。使い捨てで感染の心配はない。

 カプセル内視鏡(写真1)は超小型カメラを内蔵した長さ26ミリ、直径11ミリのカプセルで、口から飲み込むだけで小腸内の撮影ができる画期的な内視鏡です。従来の検査のように苦痛もなく低侵襲であること、検査中は仕事や家事など日常生活が送れることなどが大きなメリットです。ただし現時点のカプセル内視鏡は、従来のチューブ型の内視鏡のようにポリープを切除したり、組織を持ち帰ったり(生検)、薬をつける、といった「治療」はできません。あくまでも小腸内の出血場所を特定するなど、病変があるかどうかのスクリーニングを目的としています。治療が必要な場合は、カプセル内視鏡検査の後で「ダブルバルーン式小腸内視鏡」などを使っておこなうことになります。

 さて、検査対象の小腸ですが、食道や胃、大腸などの消化管の中でも栄養吸収を担う、もっとも大切な臓器です。しかし長さが6〜7メートルもあり、口からも肛門からも遠く、曲がりくねった臓器で、従来の内視鏡では検査が困難でした。そのため2000年のカプセル内視鏡登場以前は“暗黒の臓器”と呼ばれるほど、小腸は未知の世界だったのです。日本でも昨年10月、カプセル内視鏡が保険適用になって普及し始め、小腸の病気が意外に多いことが分かってきました。ただし現在の保険適用は原因不明の消化管出血が対象で、口からの上部内視鏡、おしりからの下部内視鏡の両方をおこない、それでも原因の判らない消化管出血や貧血がある場合のみで、「胃カメラや大腸カメラの代わりに楽に検査を受けたい」という理由では残念ながら認められていません。

カプセル内視鏡検査の流れと、 検査で分かること

 検査を受ける方は、前夜に緩下剤を飲み、当日朝絶食して来院していただきます。検査は、受信装置をセットした腰ベルトを着け、カプセル内視鏡を飲み込むだけ。カプセル内視鏡は、消化管のぜん動運動で腸を下って行き、約8時間にわたって、1秒間に2枚、全部で5万数千枚の写真を撮影。画像を腰ベルトの受信装置に送信します。夕方、装置の取り外しに来院してもらい、受信装置から画像データをダウンロードして読影センターへ。だいたい1週間で結果が出ます。

 この検査システムは、京都府小腸画像診断ネットワークの一環として始まったもので、地域の診療所では対応できない検査を、各地域の核となる病院が担当します。当院の担当は京都南部、奈良北部で、この検査で難しい病気が見つかった場合は、京都府立医大病院などが、当院をバックアップしてくれます。病診連携、病病連携により、質の高い医療をどなたにも受けていただこうという取り組みです。

 当院のカプセル内視鏡検査1例目の方は80代の女性で、長年、原因不明の出血性の黒色便に悩まされ、貧血がひどく、輸血で対応していました。今回の検査で小腸内に3〜4ミリの出血中の血管腫がみつかり、根治へのめどが立ちました!

カプセル内視鏡検査の今後と、 医師としての思いを お聞かせください

カプセル内視鏡写真

〈写真1〉
カプセル内視鏡で撮影した小腸内の出血部分。

 カプセル内視鏡検査で分かってきたのは、小腸の疾患が意外と多いこと。その約7割が「潰瘍・びらん」で、他に「血管腫」や「腫瘍」等の病気が見つかっています。また、ひざが痛いとか肩が痛いといって鎮痛剤を常用している高齢の方では非常に小腸病変が多く見られます。鎮痛剤で胃粘膜が荒れることは知られていましたが、小腸の粘膜でも同じことが起こっており、対策が急がれます。

 カプセル内視鏡で思い出すのは、1966年のアメリカ映画「ミクロの決死圏」です。脳出血を起こした要人を救うため、縮小光線でミクロサイズになった医師団が血管を通って脳に入り、手当てをするというストーリー。子ども心にワクワクして観た覚えがありますが、カプセル内視鏡は、まさにその夢物語が現実になりました。今後はカプセルの動きを体外から制御し、ポリープの切除や薬の塗布などもできるようになるかもしれません。食道や大腸の検査・治療も可能になるはずです。

 私はピロリ菌と胃癌との関わりを米国ルイジアナ州立大学などで研究してきましたが、ピロリ菌の感染がなければ、胃癌にはならないことが分かってきています。つまり、これからの医療は予防こそ重要です。読者の皆さんも早めの受診で、消化器疾患の予防を。何でも気軽にご相談ください。

学研都市病院 副院長  内科部長・消化器科部長  竹村 俊樹 医師

日本消化器病学会 学会評議員 ・指導医・専門医
日本消化器内視鏡学会 ・指導医・専門医
日本内科学会 ・指導医・認定医/日本東洋医学会 専門医
日本消化管学会 胃腸認定医
日本がん治療認定医機構 暫定教育医 医学博士

竹村  俊樹 医師
昭和56年 京都府立医科大学医学部医学科卒業
昭和56年 京都府立医科大学第一内科学教室入局
昭和58年 舞鶴赤十字病院 内科
平成4年 Department of Physiology & Biophysics 留学
Louisiana State University, Medical Center
平成7年 康生会武田病院 消化器内科部長
平成12年 康生会武田病院 消化器センター 所長
平成16年 医仁会武田総合病院 消化器センター 所長
平成20年 学研都市病院