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脊椎・脊髄疾患(頸・腰痛の治療) 四方實彦医師インタビュー

学研都市病院院長
医師 四方 實彦(しかた じつひこ)

京都府立医科大学卒業、京都大学整形外科入局、京都大学講師、京都市立病院院長、八幡中央病院等を経て、現在は医療法人 社団 医聖会 副理事長、学研都市病院院長。
専門:脊椎脊髄外科。
日本整形外科学会専門医、日本脊椎脊髄病学会・脊椎脊髄外科指導医、日本整形外科学会脊椎脊髄病認定医、日本整形外科学会リューマチ認定医、日本リューマチ財団登録医、日本整形外科学会運動器リハビリテーション認定医、中部日本整形外科災害外科学会功労会員

脊椎・脊髄センター

整形外科の専門分野である脊椎・脊髄外科は、脊椎(背骨)とその中にある脊髄(神経)に関する病気を専門的に診断治療する分野です。学研都市病院では、京都市立病院の前院長で脊椎・脊髄外科のパイオニアとして知られる四方實彦医師を院長に迎え、脊椎・脊髄センターでは日本でもトップレベルの治療を行っています。治療の最前線とモットーなどについて、四方医師が語ります。

たかが腰痛、肩こりと軽視するなかれ

ヒトの背骨は25個の椎骨 (頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個、仙骨1個)で構成され、椎骨と椎骨の間には、クッションの役割を果たす椎間板があります。椎骨の中には脊髄という太い神経が走っており、背骨は、この脊髄を守る働きと、頭部や体を支える働きを担っています。
二足歩行の人類の宿命と言いますか、長い年月を生きていると背骨が曲がったり、ズレたり、椎間板が変性膨隆して神経が圧迫されるなど、さまざまな障害が出てきます。代表的な症状が 「腰痛」 で、腰椎の椎間板や椎間関節と呼ばれる組織の老化により起こります。
また、椎間板の後壁が破れて中身が飛び出す「腰椎椎間板ヘルニア」や、椎骨が前方にずれてくる「脊椎すべり症」による腰痛もあります。「肩こり」も「頚椎椎間板ヘルニア」「後縦靱帯骨化症」「頚椎症性脊髄症」などが原因のこともあり、たかが腰痛、肩こりなどと軽視は禁物です。高齢者に多い「脊柱管狭窄症」や「圧迫骨折」なども放置していると、しびれや痛みで歩けなくなり、やがて寝たきりになってしまいます。
高齢社会の進展で、このような背骨の疾患はますます増える傾向にあり、それに立ち向かう「脊椎・脊髄外科」の重要性は大きくなるばかりです。

技術の向上で、手術の安全性が飛躍的にアップ

昔は単純なレントゲンと脊髄造影検査しかありませんでしたが、CTやMRIが登場し、脊椎・脊髄疾患の診断技術は格段にアップしました。
手術も、私が学生の頃はノミと槌でやっていたような状態でしたが、今では設備が整った病院なら顕微鏡を使ったり映像を見ながらの微密な手術ができるので、メスを入れる部位が正確に、必要最小限になりました。ですから術後の回復が早く、安全性も高まりました。曲がったり、安定性を失った背骨を矯正し支えるために器具を挿入する、という手術手技、脊椎内固定器具もずいぶんと進歩しました。昔はステンレス製だったのが今はチタン製になり、種類も1種類しかなかったのが何百種類の中から症例に合った形状の器具を選べるようになりました。
腰痛持ちの患者さまの中には「痛いけど、切るのは怖い」と言って、民間療法などを渡り歩いている方がいますが、早くきちっとした診断を受けて、根本から治すことをお勧めします。痛みを抱えていると精神的にもつらいですし、背骨の病気はこじらせてしまうと治りが悪いのです。
コルセットなどによる保存的治療が適する場合もあります。当病院では半年とか1年とか、保存的治療を続けても治らなかった方が全国の病医院から紹介されて来られるので、手術が圧倒的に多くなります。また、よそでうまくいかなかった手術の再手術も多いですね。

満足したら、進歩は止まる

現在、私は週3日、1日に1〜2件の手術を行い、それに緊急手術も入り、頚椎から腰椎まで数多くの手術をしています。
中には90歳を超えて、どうしても自分の足で歩きたいと、手術を受けに来られる方もあります。こういう意欲的な方は、たいていよくなります。たくさんの忘れられない患者さまの中でも、遠方から来られた90歳で現役の会社役員をされている男性は強く印象に残っています。高齢者に多い「腰部脊柱管狭窄症」で痛くて歩けないのに、どこの病院でも「歳だからしょうがないですね」と見放され、家族にも「手術だけはやめてくれ」と言われ、「こんな身体では生きていてもしょうがない」と落胆されていました。手術の後は地元に帰って仕事に復帰され、心身ともに見違えるほど元気になられました。手術でここまで社会復帰できる人もいらっしゃるのですから、本当にうれしくなります。
手術の技術を磨くにはたくさんの経験を積み重ねることが必要ですが、私はもう一つ、自分が手掛けた手術に安易に満足しないことを肝に銘じています。他人から見れば百点満点と思える手術でも私自身が100点と満足出来るのは今でも10件中、8件か9件で、こうしたらもっと患者さまのADL (Activities of Daily Living, 基本的な日常生活動作)のレベルが上がったんじゃないか、予後がもっと良かったのではないかとあれこれ考えるのです。内外の文献を調べたり、学会で情報交換したり、自ら研究して、次の手術に生かします。安易に満足したら、そこで進歩が止まります。
よく、手術時間が短いと驚かれるのですが、術前の綿密な計画と止血にどれだけエネルギーを使うかがポイントです。血が出ないようにすれば、早く終わる。止血が不十分だと術野が血だらけになって、手術時間も長くなり、患者さまの身体的な負担も増えるのです。

治療のモットー「患者さまの痛みに共感・共鳴し、ともに病気と闘う」と、これからの夢

私は当初、整形外科医として人工関節や骨折などの手術も手掛けていました。京都大学へ助手として帰ったとき、脊椎・脊髄外科をやる者がいなかった。それじゃあ、私がやろうと。取り組む人が少ないだけに、スリルがあって面白そうだと思ったのです(笑)。やってみると、非常に奥が深い、やりがいのある分野でした。
背骨の手術ですから、患者さまは手術の失敗を恐れ、全身麻痺になるのでは…などと躊躇されることがあります。が、私は「一緒にがんばりましょう!」と声を掛けます。大変な背骨の痛みや手足の麻痺から解放されて、ぜひ、人生を楽しんでほしいと思うのです。患者さまの痛みに共感・共鳴し、持てる知識、技術を総動員してともに病気と闘い、納得していただける医療を提供する――これが私の仕事、これが私のモットーです。
学研都市病院では、「脊椎・脊髄センター」を中心に据え、日本の脊椎脊髄疾患治療の先進的な拠点施設にしていきます。最高の治療はもちろんのこと、後進の指導と新しい治療法の研究、開発、スタッフの育成、患者さまへの情報提供など、使命感をもって取り組んでいます!

患者さまへ…

手術をするなら「家の近くで」という方がいらっしゃいますが、当院には、沖縄、中国四国、和歌山、静岡など全国各地から来られます。結局、いい技術をもった医師を選び、心を通わせ、前向きに治療を受けるのが一番だと思いますね。“単なる腰痛”などと勝手に自己診断していると「脊椎・脊髄腫瘍」など重い病気が隠されている場合もありますから、背骨に異常を感じたら、まずは設備の整った病院で正しい診断を受けてください。
さて、私自身は手術で何時間立っていても、腰痛になったことはありません。ただし、下手な(?)ゴルフに行くと翌日、腰に痛みを感じる。でも、実はちゃんと検査をしたことはなくて、2〜3日で治ってしまうのでたぶん筋肉痛だろう…と。もちろん長引く様ならX-P、MRI等の検査を受けなければいけませんね。